私のきものストーリー③
“人生の節目を着物で迎える”文化を広めていきたいと思ったきっかけは、東北大震災でした。震災の被害のあと医療者としていろいろ仕事もして深く思うこともあったのですが、きものについても同じように印象的なことがありました。
東北大震災のあと、当時通っていた着付けのグループで陸前高田に慰問に行った際のできごとでした。
私は、踊りながら着物の帯結びをする「帯舞い」という踊りのサポートとして参加したのですが、地元の高齢の女性たちが「私も着物は沢山持っていたの。無くなっちゃったけれど今日見られて良かったわ」「あなたの着物に似たものを持っていたのよ」などと積極的に話しかけてくれました。
被災によってすべてを失ったように見える人でも、大事に身に着けていた着物の思い出はしっかりと残り、そして、誇りを持って語ることができるのだと気づきました。この出来事をきっかけに、単なる着物が好きという思いから、私たちの人生に彩りと誇りを与えてくれる“着物文化”をもっと広めたい、そう思うようになりました。
東北大震災が起きた時は地方の病院でリハビリテーション科医師として働いていました。とてもやりがいがあると思いつつ仕事に追われるようで、これを一生繰り返していて良いのかと悩む時期でもありました。
仕事とは違うところで、着物に人を励ます力があるとすれば、新しいことを勉強したいという気持ちがわいてきたのでした。お茶お花という伝統的な素養よりもカラーコーディネートを学ぶことに決めたのは、今まであったことのない人たちと知り合いたい気持ちが強かったからだと思います。
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