看取りに自信がない
リハビリテーション科医師の気づき
着物好きが高じてきものカラーアナリスト、KICCAきものカラーコーディネーターになったリハビリテーション科専門医豊岡志保です。
このシリーズでは仕事の中でスタッフや患者さんとのやり取りの中で気づいたことを書いていきます。
スタッフに看取りに自信がないと言われたら?医師としてどうしますか?患者の家族、患者としてどう感じますか?
ある医師から神経難病病棟の看護師は看取りのことを知らないと言われました。だいぶ前の話です。
「『君たちは神経難病患者の看取りに自信があるか?わかっているのか?』と聞いたら、私たちはわからない、勉強が足りないと情けないことを言った」と話されました。
まじめな先生ですから「私が一から教えなければならない、なんてことだ。」
でも、自信があると答えるスタッフのほうが私には恐ろしい。看取りについてわかっているから任せて!なんて違和感があります。
神経難病とはパーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)など原因が不明で治療がない病気の一群です。進行性のため、去年できたことが、今年はできない。症状の発現から診断までが紆余曲折あり、長い時間がかかることがあるため、経過中にリハビリテーション科を受診することも多いです。
訓練をしながらよくならない患者さんに寄り添っていく。
その時々で生活をできるだけ整える。
希望が持ててかつ自ら今後のことを決められるように将来のことを話していく。それを心がけていました。
徐々に体が動けなくなっていく患者さんは寝たきりになると入院して最後まで過ごすことがあります。体が痛いというよりも自分の命が奪われていく恐怖があります。
外来ではこれから生きるを選択していたのに、入院すると今を生きるを選択する必要があります。
看取りについて自信があるから教えてあげますというスタッフがいたら患者さんは心強いのでしょうか?それよりも自分と一緒に悩んだり、考えたりしてくれるスタッフが大切ではないかと思うのです。
だから本当に最後に近くまでリハビリテーション訓練を継続することがあります。話し合うことも大切ですが、訓練は一緒に行動することだから。リハビリテーションは生きるに参加することだから。
病棟の看護スタッフは悩んだり、後悔したり、時には医師からわかっていないなんて怒られたりしながら24時間患者さんに寄り添います。自信がなくて当然、それは学びたいという気持ちの表れですよ。
どうぞ、まじめ先生ご心配なく。